あぶらかたぶらちんたらほい


 四年生になった。今日は新学期に入って初めての闇の魔術に対する防衛術の授業だ。

 メリィソート教授は上品な老婦人で、ちょっとばかし発音が聞き取りにくいことを除けば素晴らしい先生だ。彼女の歯茎があと十年保ってくれてたなら、私らも聴覚に負担をかけずに済んだだろうと思うよ。


「今日ふぁ、禁じられつぁ呪文をほしえまふ」


 今日は禁じられた呪文を教えます、と言いたいんだろう。何でいちいち翻訳しながら授業を受けにゃならんのか全くもって不思議だ。早く引退すれば良いのに。


「禁じられつぁ呪文は三つありまふ」


 分かる人は? と質問が来て、私とリドルが手を挙げた。


「リドリュくん」


 数少ない歯と歯の間を通ったような声でメリィソート教授はリドルを当てた。


「磔の呪文、服従の呪文、死の呪文です。この三つの呪文は1717年に人に対する使用が禁止され、使用した場合はアズカバンで終身刑を受けることになります」

「よろしひ。シュリザリンに五点」


 メリィソート教授が杖を振ると黒板には詳しい解説――あんまりリドルの言ってたことと変わらん――が書き出された。クルーシオ、インペリオ、アバダケタブラ……。

 数年先の未来には、リドルはきっとこれらの呪文を唱えまくってるに違いない。そういう未来は好かんのだが、リドルの道は止まらんのだろうな――私がここにいるってことは。平穏で何が悪いというんだろう? ホークラックスいくつも作って醜くなって、もったいない、せっかく恰好良い顔してんのに。


「死の呪文ふぁ、アブァダ・ケグァブラといひまふ」


 聞き取りにくい。え? あぶらかたぶら?


「あぶらかたぶら?」

「アバダ・ケダブラだよ」


 リドルが訂正してきた。


「でも、メリィソート教授『あぶらかたぶら』つったよね?」

「言語不明瞭なのはいつものことさ」


 私だったら、『アバダ・ケダブラ』と発音しなくても致死魔法使っちゃえるかもしれないな。


「庭小人の駆除などに使えまふ」


 使っちゃって良いのか、メリィソート教授?!

 配られた害虫――Gのつく昆虫。どこから集めてきたんだ?――に呪文を唱える。この時代は実践的な授業が多いのかね? ハリポタの原作を読む限り、闇の魔術に対する防衛術で実践的な授業をしたのはリーマスだけな気がするよ。


「あぶらかたぶらちんたらほい♪」


 死んだGと私を、リドルが見比べて嫌そうな顔をした。

 何か悪いことしたかな、私。


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