勇気 ネビル・ロングボトムは怖がっていた。彼は祖母に、飛行術の授業でレイノに助けられたことを書いたのだが、返ってきたのは「敵に借りがあるままなのは許しません」という文だった。いつの間にレイノが敵に認定されたのやら分からないが、これはつまりお礼を言いに行かなければならないことを指していた。レイノに会うのは良いんだ、レイノだけなら。ただ、周囲にいるスリザリン生が怖いのだ。 「どうしよう……レイノにお礼言いたいのに」 影からコソコソとレイノを窺うネビルは、自分と同じ行動――つまりある種のストーキングを行っている生徒に気付いた。 「え――ハリー?」 かの有名なハリー・ポッターが、扉の影やら柱の後ろから赤毛の少女をチラ見しているのだ。あのハリー・ポッターが。あの「ハリー・ポッター」が。 ネビルは勇気づけられた気がした。話しかけ辛いのはハリーも一緒なんだ、僕だけじゃない。この瞬間ネビルには、ハリーとの一方的な連帯感が生まれた気がした。一方的なのだが。 「ねえ、レイノ!」 その思い込みによる後押しのおかげでネビルはレイノに礼を言えた、が、ハリーから恨まれた。 勘違いとは恐ろしいものだ。 |