少年と梟


―忘れ去られた羽毛―













 尖塔のてっぺんに、その梟小屋はあった――……

 少年は彼の愛鳥を探して梟小屋を見まわした。彼の飼う梟は茶色に黄色のまだらが入っているような色をしていて、他にはあまりない目立つ梟だった。


「おーい、スタインー?」


 名を呼べばようやっと梟も飼い主に気付いたらしい。バサリと羽音も大きく少年の差し出した腕に掴まる。


「ははっ! 手紙を頼めるかい? 母さんに送って欲しいんだ」


 スタインは頷く代わりに一声鳴いて、おとなしく足に手紙を結ばれる。


「じゃあ、スタイン、いってらっしゃ――」

「忘れてたー!」


 いってらっしゃい、と梟を離そうとした少年の声に被せて、まだ幼い少女の声が小屋を満たした。蹴り飛ばされた扉の金具がへしゃげている。


「ああ、ご免よ羽毛! すっかり忘れてたんだ! 愛してないわけじゃないんだよ、お前が世界で二番目に好きだから! あー、こんにちはー」

「こ、こんにちは?」


 とある梟に突撃するように少年の横を走りすぎたのは、スリザリンの新入生、レイノ・スネイプだ。十一歳とは思えない低身長と父親と似たところが全く見受けられない容姿で有名だ。本当にあの教授と親子なのか疑わしいとみんなが噂していることを、彼女は知っているのだろうか?


「ああ、許してくれるの? 大好きだよ羽毛、お前の胸毛が特に」


 『ウモー』というのがこの梟の名前のようだ。猫の毛みたいに柔らかそうな羽をしていて、毛玉っぽい。


「ふふふふふ、やーらかいなあ、羽毛は。羽をむしって座布団にしてぇ」


 『ザブトン』とは一体何だろうか? 少年は出ていく機会を完全に失って、どうしようもなく戸惑っていた。


「さあ、羽毛! ホグワーツでの初仕事だよ。このお手紙をセブに届けるんだ! 乗るのは頭だよ、分かってるね? 届けるのは次の授業開始のチャイムが鳴った後ね。OK?」


 少年は『ウモー』が頭に乗った薬学教授を想像し、似合わなさに頭を何度も振った。


「ボガートなんて待ってらんないんだぜ☆」


 良く分からないことを言って怪しげな笑い声をあげるレイノの後ろ姿を見ながら、少年は涙した。


早くここを出ていきたい!



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