各所の物陰から―ストーカーは犯罪です―


 ホグワーツ校長、アルバス・ダンブルドアは物陰に隠れつつ、こっそりと進んで行く。すれ違った生徒や教師たちが何事かと目を剥き背中を見送るのも気にせず、とある親子の後を追うのだった。







「セブー」

「どうした、レイノ」

「腕疲れた」

「仕方無い」


 セブルスはしがみ付いた我が子を背負おうと背中に手を回し、代わりにレイノが彼の持っていた本を抱える。


「ありがと」

「うむ」






 魔法薬学研究室――彼の自室に向かうセブルスと、その背中に貼りつくレイノ。少女にジジイと蔑まれる老人は、羨ましそうにそれを見つめる。





「校長」

「おや、ミネルバ。どうしたのじゃね?」


 その老人の肩を叩いたのは、ホグワーツの副校長、ミネルバ・マクゴナガルだった。眉根を寄せ、愚かな校長に言う。


「どうした、はこちらの台詞です。何をなさっていらっしゃるのです? ストーカーなんてなさってみっともない。正々堂々正面からぶつかって砕ければ良いではありませんか」

「砕けるのは決まっておるのかね……?」

「当然でしょう。今までのことを考えれば明白なことですよ」


 今までダンルブドアがレイノにしてきたことと言えば、クリスマスに大量のレモンキャンデーを送りつけたりとか(レイノ自ら焼却処分)、サンドバック抱き枕を送ったりとか(抱き枕としての仕事を果たさぬまま玄関横に吊るされている)、自分のベストショット写真集を手渡したりとか(放り捨てられた)。彼の行動とそれによる少女の反応を考えれば、当たったら砕けるだろうことは自明の理だ。


「そ、そんなことないわい。わしだってちゃんと、レイノに愛されとるもん」

「なら正面から行けばいかがですか?」


 だが事実を認めたくないダンブルドアはうろたえながらも否定し、ミネルバに言われてうっと詰まる。


「み、ミネルバなんて嫌いじゃー!」


 泣き真似をしながらレイノに突撃しセブルスに撃退されている校長を見て、副校長ミネルバ・マクゴナガルは明日のホグワーツが心配になったのだった。


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