童女版・子泣き爺


 セブルス・スネイプは困惑していた。原因は彼の養い子で、朝食を終えた後から背中に貼り付いて離れないのだ。


「レイノ、どうした」

「セブ補給」


 意味が分からない。

 平均的な十一歳よりだいぶん背の低いレイノは少々荷物になるが軽い。前日のホグワーツ特急の疲れを引きずる他の一年生たちが欠伸をする中、レイノは疲れを知らないかのごとくしっかりとしがみつき、背中で揺られている。


「薬品の匂いがする」

「薬学教授だからな」

「安心する」

「――そうか」


 何がそんなにレイノを不安にさせたのだろうか? 破天候で、気ままで、頭の良いレイノ。同世代の誰よりも自由な我が子を自慢に思いこそすれ、邪魔だと思ったことは一度としてない。自分が不安にさせたのだろうか、一体何が原因なのか、セブルスは悩む。


「レイノ、そろそろ重いのだが」

「ヤダ。今日一日はセブの背中と同化するんだ」

「一日中か」

「うん。今日はセブの一部だから」


 母親を知らないレイノ。もしかして寂しい思いをしていたのではなかろうか。家に他人の手が入るのが嫌で、レイノがしっかりしているのを良いことにさっさと辞めさせた。だがレイノにとってはどうだったのだろう? あの、自分で言うのも何だが陰気な家に一人いて、本だけを友とするのは辛かったのかもしれない。


「ふむ……ではちゃんとしがみ付いていろ。落ちないようにな」


 これからは毎日顔を合わせることができる。出来るが、教師と生徒になってしまう。贔屓などできないしする気もないが、今日一日だけは――この可愛い我がままに付き合ってやることにしよう。


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