マートルに親友宣言されて、数日が経った。談話室で本をめくりながら自分で淹れた紅茶を啜ってると、外から帰ってきたリドルンが――最近アブラカタブラと仲良さそうに乳繰り合ってたくせに――変な顔しながら声をかけてきた。


「アー、鈴緒? 聞きたいことがあるんだ」

「何かねワトソン君」

「最近マートルと仲良いみたいだけど、親友って本当?」


 ノリが悪い奴だ。ホームズ先生と言わんか。


「一方的に親友宣言はされたけど? いきなりでビビったよ。マートルってアレだね、良く言えば猪突猛進、悪く言えば誇大妄想っていうの?」

「どっちも悪口に聞こえるけど僕の耳がおかしかったのかな。――親友宣言されたって、それはどうして」

「私はマグル育ちだって言ったら、仲間意識が芽生えたみたい」


 紅茶飲む? って勧めたら、リドルンは一瞬苦そうな顔したけど頷いた。カップをもう一つ呼び寄せて、それを温めてから紅茶を注いだ。


「でも鈴緒は半分魔法族の血が入ってるじゃないか。マートルと同じわけじゃない」


 リドルンは椅子を引いて座り、私の顔を横から覗き込んできた。なんだよ、近いな。


「そんなの関係ないさ。マグル式に育った、親切な人間がいた。だから友達になった。そんなもんじゃないかな?」


 ところでどーしてリドルンの耳にそんな話が届いたんだか。親友宣言からまだ三日も過ぎてないぞ。庭にいた生徒だって、聞こえてたかどうかも怪しいくらい離れた場所にいたしさ。


「で、どーしてマートルの話になったのさ? 耳が早すぎない?」

「ああそれね、マートルが言ったんだよ。彼女、あんまり好かれるタイプの子じゃないだろう? 苛めっ子たちに貶されて、『私、鈴緒・小早川の親友なんだから!』って廊下の真ん中で叫んだんだよ、さっき」


 一方的なラブコールだなぁ。ま、悪い気はしないけど。マートルもなあ、もう少し人の話を聞いてくれれば付き合いやすいんだけどな……。


「そりゃあ――引き籠りになりたくなってきたなぁ」


 私も人気がないわけじゃない。外面はリドル並みに良いし、成績も毎年他を抜いて学年一だし、容姿もこっち風に言うならオリエンタルビューティーとかいうの? だから。その『人気がある』鈴緒さんが、ハッフルパフのマートル『なんか』と本当に友人なのか? って人が群がってくるに違いない。うう、面倒くさい……。


「談話室から出たくなくなってきた」

「残念、マートルが『親友』を呼んでって言って、寮の前で待ってるよ」

「う、うわぁぁぁぁ神なんていねぇっ!」


 カップに半分残った紅茶を飲みきろうか迷って、まだ紅茶を飲みきってないって言い訳して逃げるためにそのまま置いといた。








 質問攻めに遭ってフラフラになってテーブルに戻れば、リドルンが私の紅茶を飲み干してて、新しく淹れてくれてた。


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