「ねえ、貴女勉強できるでしょ。コツでもあるなら教えてちょうだい」


 マートルは劣等生ではないにしろ、あんまり成績が良いわけじゃない。中の下といったことこかな? 図書館の端っこの方にある机で、私とマートルが向かい合って座る。チラチラという視線が来るのはあれだ、スリザリン生がハッフルパフ生の面倒を見てるからだろうな。滅多にない、ていうか他に見ない光景だよね。


「コツと言われても、とりあえず集中して読む、これはと思ったところに下線引いて目立たせておく、何度も読み返す――しかないとおもうけど?」


 本は十冊同時に読むのが良いらしいと昔読んだことがある。どんな理論立ててそれを説明してたのかなんてもう覚えてないけど。


「誰でもしてるわ」

「そうだね」


 マートルはコガネムシの様な――と言ったらハグリッドが可哀想な目を細めた。


「まあ良いわ。貴女がここは重要だって思うところ、教えてよ」


 マートルが広げたのは呪文学だった。どうやら一番苦手なのが呪文学みたいだ。


「呪文学なら実地が一番身に着くよ。習うより慣れろだよ」


 私はマートルの手を引いて図書室を出た。もうこうなったら開き直って、マートルの相手をしちゃろうじゃないか!






 とりあえず言おう。外国の教科書と言うのは、日本で私らが見慣れたようなあんな薄っぺらいものとは比べ物にならないくらい、ごつくて重い。でも代わりに参考書がいらないくらい詳しく説明がされてて、日本式と欧米式のどっちが良いかはううむ、人それぞれ? まあ、ここじゃあ教科書を読みさえすればどうにかなるんだ、どうにか。というわけで読みながら実地だ!

 図書館から一番近い庭に出た。教室三つ分くらいあるそこには授業がない生徒のグループがいくつか散ってるけど、魔法をちょっとくらい失敗したところで他の人間が被害を受けるなんてことはないだろ。


「じゃあ、得意な魔法からやってみて」


 マートルは日光の下でするのが嫌なのか、本当に嫌そうな顔をした。あんた、ちょっとくらいは表情をつくろえよ。


「太陽の下って、嫌いなの。どうしていつも曇ってくれないの?」


 私からすればここもだいぶん曇ってると思う。ロンドンなんか、日本人からすればいつ「晴れ」てるのかさっぱり分からん。晴れてると判断する基準が良く分からんというか。


「これでも曇ってると思うよ。物語の吸血鬼じゃないんだから、日光に当たって死ぬことなんてないでしょ」


 と、マートルが目をまん丸にした。


「物語の吸血鬼って――貴女くらいなら吸血鬼に会ったことあるかと思ってた。スリザリンなのに」

「吸血鬼どころか、日本には魔法使いなんていないよ、マートル」

「貴女魔女でしょ」

「養父が魔法使いだったんだ。言うなりゃ私もマグルの出だよ」


 マートルはこれを知ったからか妙に喜んだ。私も日本の純血だと思ってたんだろーな。


「そうなら早く言ってちょうだい! 同じマグルの出なら、貴女は私の親友よ!」







 何故だ。


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