「待って、アブラクサス。ホグワーツの歴史に、彼女が不死者だって記述はなかったはずだけど」


 今まで口を挟まなかったリドルが片眉を上げた。


「ああ、それはレイノ・ホグワーツが本当に不死者だったのかという説があるからだ。不死者なら今でも生きているはずだが、学校創立の前後の十数年もしくは数十年の間しか現れなかったから正しい判断が下せないということで除外されている。書かれているとすれば『魔法史裏話』や『秘匿された歴史』になどだな」


 『数十年の間しか現れなかった』ねぇ。私が死ぬはずないし、負けて呪いを受けるってこともないだろーし、これはどう考えるべきか……元の子世代の時間軸に帰った、もしくは違う時代に飛んだ? 四つのうちの一つは創立者世代だけど、あと一つ残ってる。どういう順序で飛ぶのかは分かんないけど――とりあえず時間トリップをして子世代かもう一つの時代に帰るんじゃなかろうか。


「魔法使いの家系にはレイノ・ホグワーツに関する話が伝わっているが、それは寝物語のような伝説じみたものが多い。詳しく知りたいならそういった本を読んだ方が確かだ」


 創立者たちの手記を探すという手もあるが、あの大量の蔵書の中では見つけるのは難しい、とアブたん。そーだろうな、あそこ、一体何百万冊あるんだってくらい本だからけだもん。


「どうする、鈴緒? 調べてみるかい、君の参考になるかもしれないよ」

「うーん……」


 正直言って、手っ取り早く知るには『魔法史裏話』とかを読んだ方が良い。だけど不確実な噂話を読むよりは、手記を探した方が良い気がする。


「手記を探そう。私はゴドリック・グリフィンドールとヘルガ・ハッフルパフの手記を探すから、二人はサラザール・スリザリンとロウェナ・レイブンクローのを探して」

「分かった。ついでに鈴緒、これで貸し一つね」

「ええ?! なんでさ、慈善事業じゃないの?!」

「こっちは貴重な勉強時間を割いて手伝ってあげるんだよ、当然じゃないか」

「リドルンのケチんぼっ!」

「そんなこと言うと手伝わないよ」

「酷い、リドル大明神様、お情けを!」


 リドルがそっぽを向いたふりをする。薄く笑って言った。


「今度クッキー焼いてくれたら良いよ。もちろん、君はいつも砂糖が少なすぎるから多めにね」

「それじゃあ私が食えないじゃんか、私が焼くのに」

「罰だよ」










 ――この時、すっかり私は忘れてたんだ。サラザールの手記にはきっと、あの事が書かれてるだろうってことを……


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