小部屋を離れ、ホールの端に寄った。ダンブルドアが口火を切る。


「君は入学許可証を持っておらんね?」

「ええ。でも、入学できるだけの素質を持ってる」


 どう説得しようかだなんて、考えてるわけない。だってジジイだもん。


「親御さんはおるかね」

「いないよ」


 実父はまだ生まれてないし、養父も卵以前だ。


「ふむ、では、わしが君の保護者になろう」


 ジジイはこんなご時世のくせして、簡単に許可をだしてくれちゃった。――が。


「え、ヤダ」


 あ、つい。やっちゃったゼ☆


「あー、えーっと……」


 目を丸くするジジイ。困った、どう言おうか。許可撤回されちゃかなわん。


「私に保護者はいらないよ。金に困れば働くし、杖があるから明日の命の不安はないだろうし」


 でもとりあえず、入学させて欲しいんだ、と言えば、ジジ――ダンブルドアは不満そうに頷いた。


「孫ができるかと思ったんじゃがのう」

「ならジジイって呼んであげるよ」


 いつもそう呼んでるんだけどね。


「斬新な呼び方じゃのう」

「そう言われたのは初めてだよ」


 ジジイいつも嘆いてたじゃないか。ジジイなんて呼ばれて悲しいーって。未来の話だけど。


「名前は?」

「小早川鈴緒。こっち風に言えば鈴緒・小早川。日本人だよ」

「分かった、鈴緒。では部屋に戻りなさい。みんなと合流するのじゃ」

「了解」


 私は部屋に戻るためジジイに背を向けたけど、ちょっと振り返って言った。


「ダンブルドア、許可出してくれて有難うね。だからちょっと教えてあげるよ。――今年の入学生の中に闇がいる」


 瞠目するダンブルなドアを今度こそ振り返らずに、私は狭い小部屋に戻った。これでリドルの教育に気をつけてくれれば良いんだがね。まあ、私の知る限り未来に変わった様子はなかったんだけど。


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