車内に、もうあと五分でホグズミード駅に着くという放送が響いた。私は物言いたげなリドルを追い出し、ローブに着替えた。男は通路で十分なのよ。






 荷物を置いて列車を降りれば、空はもう暗く一メートル先でさえ危うい闇だった。迎えだろう小男がしゃがれた声で一年生はこっちに来い、と繰り返す。


「アレじゃあ聞こえるものも聞こえないと思うんだけど」

「年をとるってこういうことなんじゃないかな?」


 あんまり声が擦れてて聞き取りづらいからリドルに言えば、肩を竦めてそう答えられた。


「ふむ、老いたくなくなってきた」

「誰もそうだと思うよ」


 老人の後を付いて陰鬱な道を歩いた。前方でかすかに揺れるランタンが遠い。角を曲がって見えたホグワーツ城は荘厳で、威嚇してんのか、と思わないでもなかった。





「四人ずつだ、四人ずつ舟に乗れ」


 岸に止まった小舟に四人ずつ乗り込む。外人はガタイが良いから邪魔だ。狭いったらありゃしない。


「前進!」


 舟がひとりでに動き出し、一年生は――私もなんだけど――驚きの声を上げる。え、ちょ、体を揺らすな、酔うでしょが!

 地下の船着場で降りて、石造りの階段を上る。地下にある理由が分らん。階段、濡れてて滑りそうなんだけど。――と、実際滑りかけた私をリドルが支えてくれた。紳士の国! 素敵よリドル、好きになりそうだわ、萌えの対象として。















「先生、先生! 一年生を連れてきました」


 木の扉をガンガン叩いて小男が怒鳴るように言った。でも擦れてるから聞き取りづらいことに変わりはない。扉が開き、ジジイ、じゃなかった、ダンブルドアが顔を出した。


「おお、有難う。ここからはわしが連れて行こう」


 純粋な目をした子供たち(もちろん私がそれに含まれる筈もない)をグルリと見まわして、ダンブルドアは私で目を止めた。口パクで話があります、と言えば、わずかに頷いた。


「ついておいで」


 ダンブルドア先導の元私たちは無駄に広い玄関ホールを過ぎ、小さな空き部屋に押し込まれた。そういえばそんな記述があったようななかったような。秋のくせして室内は熱気で満ち、暑い。


「ホグワーツ入学おめでとう。新入生の歓迎会がまもなく始まるのじゃが、席に着く前にせねばならんことがある――寮の組み分けじゃ。これからの七年間、寮の者が君たちの家族になるじゃろう。勉強やなんやかんやはだいたい寮ごとじゃからの。

 寮は四つあって、グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンじゃ。君たちの良い行動で寮に得点されるし、いたずらがバレれば減点もされる。学年末には最高点の寮に寮杯がもらえるから、くれぐれもバレないようにの」

 いたずらっぽく笑んだダンブルドアに、私以外の、あ、違うな、私とリドル以外の緊張の糸が緩んだ。リドルってば硬い顔しちゃって。キミはスリザリンに決まってるよ! 私は分らんがね。


「もうすぐ皆の前で組み分けの儀式が始まるが、待っとる間に自分を格好良くしとくのじゃぞ」


 ダンブルドアが私を見た。頷いて、するりとその場を離れる。リドルは追ってこなかった。


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