初めに見たときは、施設にいた七つか八つの子たちとそう変わらない見た目をしていた。背は低いし、体つきも華奢だ。どうしてホグワーツ特急に乗っているのか不思議だった。

 だけど、彼女は起きて僕と一言交したと思えば急に挙動不審になり、ダンブルドアを脅すとかこの見た目じゃヤバいとか呟きだした。そして不可思議な呪文を唱えたかと思うと、身長が十センチくらい伸びて、ウルフカットの黒髪にハシバミ色の目の(目だけは変わらず同じ色だった)違う顔の女の子になってしまった。


「フフッ」


 これは幸先が良いことの前触れかもしれない。どうやらこれが彼女の弱みであるようだし、脅迫材料に使える――そう思った。








「リドル君よ」

「うん? 何かな?」

「私の前ではその気持ち悪い猫かぶりを止めたらどうだね。他人は騙せても私は騙せないよ」


 表情が凍りついた。でも、一瞬で平常を取り戻す。どういうことだ、なぜ彼女は僕の仮面が分かった? 冗談でこんなことを言うはずもないし、どうして。


「どうしてって顔してるねえ。そりゃあ、私が猫かぶりの先輩だからさ」


 まあこれから暫くはかぶる必要無いみたいだけどねー、と彼女は笑った。ネズミを前にした猫みたいな笑みで。


「本名は訳あって名乗れないけど私は小早川鈴緒。こっちでは鈴緒・小早川だね。よろしくリドル、秘密があるのはお互い様だよ」










 初っ端からこの女に当たってしまったのが僕の不幸であり、幸運だったと言える。ホグワーツでの七年間は鈴緒に振り回されて過ぎたけれど、それ以上に知識と能力と自分を偽る技術を持つ彼女の存在は、僕の助けとなったのだから。


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