寮に戻れば、扉の前には男の子だろーに涙目のドラコと妙に静かなアメリア、口をパクパクさせてるパンジーが待ってた。


「レイノ! ポッターに巻き込まれたと聞いたぞ!」


 突進してうっちゃりしてくれたのはドラコで、床がじゅうたん敷きじゃなかったら腰を痛めてるところだよ。受け身取れたけどさ、私じゃなかったら怪我してたよ全く! 罰として毛を剃るよ!


「犯人はクィレルですってね? 勝手に死んでくれて大迷惑だわ、生きてたなら仕返しのしようもあったのだけど」


 アメリアが片手に下げる本を見て苦笑した。『拷問・尋問・相手を痛めつけたい人のための呪文集〜上級編〜』。なんてあからさまなネーミング……。


「心配したのよ?! あんたがいつまで経っても帰ってこないからスネイプ教授に会いに行って、もう何時間も前に帰ったって聞いた時びっくりしたんだから! ああ、もう――本当に良かった!」


 ドラコを引きはがして立った私を抱き込んでパンジーは叫んだ。身長差があるからそのまま持ち上げられて振り回される。気持ちは嬉しいよパンジー、でももうちょっとその力を緩めてくれると嬉しいなぁ……。


「心配掛けてごめん、何もなかったから安心して? ほとんど眠ってただけだから」


 ヴォルディーとハリーの話の輪に入ろうにも無視されたからね!






 笑ってそう言うとやっと降ろしてもらえて、寮の扉をくぐった。行方不明者が出たからかスリザリン寮は就寝時間をとっくに過ぎたはずの今も煌々と明かりが灯ってて、ほとんどの寮生が起きてるんじゃなかろーかってくらいの人数が談話室にひしめいてた。良かったことに筋肉族の奴らはあんまりいない。クィディッチ関係の皆は揃ってたけど。


「お帰りスネイプ!」

「怪我がないみたいで安心したわ」

「不運だったな、ポッターに巻き込まれたんだろう?」

「地下ではどんなことがあったんだ? 教えてくれよ」


 などなど私を囲んでそんなことを口々に言うもんだから、私聖徳太子じゃないし全部答えるのは無理だろとちょっとため息を吐いた。


「ただいま帰りました、私は無事です! 怪我もそうありません。心配してこんな夜遅くまで待っていて下さり、本当に有難うございます。地下での話はとりあえず明日しますから、今晩のところは皆さん部屋にお戻りになって下さい。今日は色々とあって疲れていて、今すぐ寝たいです」


 声を張り上げてそう言えば納得した声が上がり、寝る前の儀式みたいに私の頭を撫でてから皆引き上げてった。心配してくれたんだなーと思うと嬉しくなるなぁ。






「三人ともありがとね、待っててくれて。明日もあるし寝よう」


 私興奮で目が冴えちゃって眠れないわよって言って、パンジーがくしゃりと笑う。眠気とは無縁そうな目をしてるからそーかもしれないけど、安心したらストンと落ちるもんだからきっと寝れるでしょ。ドラコはソファでお菓子をつまんでてそのまま寝ちゃったらしいクラッブとゴイルを叩き起して男子寮に消えた。アメリアとは部屋が一緒だし、寝るまで話すことになった。


「レイノに何かあったら私、クィレルを死んでも許せなかったかもしれないわ」

「う、うーむ」


 隣のベッドから聞かされる台詞に嬉しくもあり、怖くもあり……クィレルが何もしてこなくて良かった。アメリアなら魔道に堕ちるのに後ろめたさとかない気がする。


「レイノ」

「なに?」

「無事で帰って来てくれて有難う」

「ウン……アメリアも、心配してくれて有難う」


 きっかけさえあれば、きっと簡単にリドルンと同じ道を辿ることになるだろうアメリア。リドルンのが力もあったし才能もあったけど、そこらの魔法使いよかこの子の魔力は大きい。リドルンを変えられなかった私がどうにかできるとは思えないけど、アメリアには闇の道を歩いて欲しくない。


「おやすみ」

「お休みなさい、レイノ」


 夜明けまで片手で足りる深夜、数時間の眠りから覚めたら、いつもの私になってるだろーか?


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