3 「は……はぁ」 命はないと思えと言われても、私死なない体だもんねー。もしするなら磔の呪文あたりじゃないと駄目だぞ。私の気の抜けた返事を恐怖による掠れ声だと思ったんだろーか、クィレルはニヤリと笑った。なんだよ、格好良いじゃないかクィレル。今まではターバンなんぞ巻いて猫背だもんだから根暗にしか見えんかったけど、背筋を伸ばせばなかなかだ。 「答えろ……貴様の母親は――」 ヴォルディーが何か言いかけた時、入口の炎がパッと弾けて火の粉を散らした。 「あなたが!」 ハリーの登場……空気読め! リリーがどうしたってのさ、気になるじゃないか! 「私だ。――ポッター、君にここで会えるかもしれないと思っていたよ」 クィレルが笑った。いつも思うんだけど、どうしてこれをフレジョの二人が見つけなかったんだろーか。あの二人ならとっくにボーイズ・ミート・ドッグやってるだろうに。悪戯に関しては頭の回転が早い二人のこと、喜び勇んで来そうなもんなのにねぇ。 「でも、僕は……スネイプだとばかり……」 「失礼な奴だ」 「セブルスか?」 私とクィレルの言葉が被った。 「レイノ?!」 「やっほーハリー。こんなところで会うとは思いもよらなかったよ」 まさか誘拐されるとは思ってもなかったからね。後ろ手で縛られてわざわざ椅子に座らせられてる私を見て、ハリーが目を見開いた。え、もしかして気づいてなかったの? 「君は少し黙っていなさい、Miss.スネイプ。――確かに、セブルスはまさにそんなタイプに見える。彼が育ちすぎたこうもりみたいに飛び回ってくれたのがとても役に立った。スネイプのそばにいれば、誰だって、か、可哀想な、ど、どもりの、クィ、クィレル先生を疑いやしないだろう?」 ハリーの顔は見てて笑える。自分こそが正義だ、自分は全く正しいと思ってたんだろうハリーは、信じられないって顔に書いてる。『悪役像』をセブに押しつけて決めつけてたんだから当然か。 「でもスネイプは僕を殺そうとした!」 「教授って付けてくれハリー、それじゃ私が殺そうとしたみたいだよ」 私の言葉は無視された。何でだっ! 悔しくて椅子をガタガタさせたら睨まれた。何でだっ! 「いいや。君を殺そうとしたのは私だ。あのクィディッチの試合で、君の友人のMiss.グレンジャーがスネイプに火をつけようとして急いでいた時、たまたま私にぶつかって私は倒れてしまった。もう少しで君を箒から落としてやれたんだが、それで君から目を離してしまったんだ。君を救おうとしてスネイプが反対呪文を唱えてさえいなければ、もっと早く叩き落とせたんだが」 暇だ……どうしようもなく暇だ……つまらん。もっとアレだ、呪文飛び交う戦いとか希望。もちろん私は観戦者で。足をブラブラさせてあくびして、仕方ないから成り行きを見守った。――で、質問って何だったんだろーか。 |