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 次の朝、ドラコがあんまり興奮してるもんだからどうしたんだか聞いてみた。


「どうしたのさドラコ。昨日の晩何かあったの?」


 するとドラちゃんは堰を切ったように話しだして、聞かなきゃ良かったと後悔することになった。――でもまあ、昨日のあれが今すぐ調べなきゃいけないことじゃないって分かったから有難いと思わなくちゃね。


「昨日の晩レイノがいなくなった後、鈴緒・小早川が現れたんだ!」


 朝食をさっさと済ませたアメリアとパンジーが教科書を広げながら紅茶を飲んでる中、サンドイッチを千切っては口に放り込みながら話を聞く。


「毛生え薬とか発明した人でしょ? 悪戯道具の神様って呼ばれてるんだよね?」


 ゾンコじゃ赤絨毯引かれそうな勢いで歓迎されたし。まあ――私が考えた商品のほとんどはアブラカタブラで遊び済みだからねぇ。効果は確かだったよ。太りやすくなる薬とか対象の頭の周りで「脳天パー子」って文字が回る打ち上げ花火とか。禿げ促進薬? 言わずもがなだよ。


「それは彼女の一面に過ぎない――知ってるだろう? 彼女はホグワーツで十年教鞭を取っていたことがある」


 え、そーなんだ。魔法史関係の本は面倒だから読まなかったんだよね……。リドルン世代で初めて勉強したんだもん。


「父上もその授業を受けていたというし、彼女は父上が唯一尊敬する魔女なんだ」


 アブたんになんだか申し訳ない気持ちになってきた。私には遊ばれるわ、息子は私を尊敬するわ。孤立無援、四面楚歌ですなぁ☆ 面白いけど。一体どんだけ生え際が後退したのか気になるところだわ……。いつかマルフォイ邸にいくことがあったら肖像画を確認してやれ!


「私そういった話は全然知らないんだよねー。ドラコ、その人は他に何かしたの?」


 自分のことをその人って言うのはちょっと抵抗があるけど――そーだ、親世代の私は何年後の私なんだろーか。私から私に充てた手紙とか残ってないかな。


「小早川教授の話は有名だぞ? スネイプ教授も小早川教授の生徒だったと聞くし――ああ、すまない、馬鹿なことを言ったな」


 ドラコが私がほぼ一人暮らしをしてたことを思い出したんだろうな、申し訳なさそうに顔をちょっとしかめた。


「気にしないで良いよ。で?」

「闇の魔術に対する防衛術の教授が毎年変わることは知っているか?――そうか。知っての通りここ二、三十年は毎年のように担当教授が変わっているというのに、小早川教授は十年間も防衛術の教師として教鞭を振るったんだ。彼女の後任はどうやら定年まで勤められると思っていたようだが、一年しか保たなかった」


 これは彼女の凄い所の一面でしかないんだがな! とドラコはなんだか自分のことのように自慢そうに力説してる。もう私も朝ご飯食べ終わっちゃったよドラちゃん。


「ホグワーツ首席卒業で、薬学家としても素晴らしい才能を発揮し、だというのに教えたのは闇の魔術に対する防衛術。万能で隙がないんだ。ああ! 僕も彼女に教わりたかった!」


 他人の話を聞いてるよーな気分だ。ひとごとに聞こえる。でもまあ、父親がべた褒めしてる人とニンニク臭いドモリを比べたらそりゃあ……マシな方に憧れるだろうね。






「ところでドラコ。そろそろ教室に移動した方が良くないか?」


 授業まであと七分しかないんだけど。


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