気付けば季節は秋になっていた。

 つい最近まで、暑い暑いと毎日アイスばかり食べていたのに。あの茹だるような熱はどこへ消えたのか。すっかり肌寒くなってしまっていた。

 日が落ちた夜の町を、カーテンで遮る。窓から冷気が伝わり、自身を抱き締めるように腕を回した。冷えた二の腕が氷のようだ。

 こんな温度差じゃ、風邪ひきそう。

 なにか羽織ろうと、椅子の背にかけたカーディガンに手を伸ばした。だけど上着に触れる前に、


「そんなのに頼らずとも、私が代わりに暖めますよ?」


 ふわっと背中から暖かみに包まれる。冷えた腕に心地良い熱が触れて、じんわり溶けていく感覚。

 聞き慣れた声に、抱き締められたのだとようやく気付いた。


「…びっくりした」


 回された腕に手を重ねる。ぬくもりの正体はメフィストだった。いつものお菓子色の服装ではなく、その上着脱いだワインレッドのシャツ姿。


「グーテンアーベント☆」

「ぐ、ぐーてん?」

「今晩和、と言ったのですよ」


 ふと、メフィストは私の冷えた指先に気付いたのか、手をとって口元へ運び、くちづけて息を吹き掛けた。

 腕と同じく、まるで春の太陽に溶ける雪のよう。あっという間に、私の手はすっかり暖まっていた。


「ありがと。…上着なくて寒くないの?」

「大丈夫ですよ☆、貴女は寒がりですねえ」

「えー、普通に寒いと思うけどなあ」


 ぽかぽかした暖に、すっかり心地良くなって来た。まどろみ始めた私に気付いたのか、メフィストは私を抱き締めたままソファに腰掛ける。自然と彼に体を預け、膝に座る体勢になった。

 力を抜き、頬を彼の胸板にとくっつけた。あったかい。やんわりした眠気に目を閉じると、瞼にあたたかいものを感じた。


「…Du bist mein Ein und Alles.」


 ぼんやりした思考が、聞き慣れない言葉をとらえる。

 しかしその言葉の意味を聞く前に、髪を優しく撫でられ、私はそのまま夢の中へとおちてしまった。






貴女は私のすべてです



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秋の過去拍手。後ろから彼に抱きしめられたいとのリクでした。たくさんの拍手ありがとうございました!

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テーマ「人外ファンタジー」
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