目の前に広がるのは、一面に茂る青々とした緑と、鮮やかで小さな花々。暖かい春風が時折それを揺らしていき、太陽を浴びてキラキラ光っている。

 わたしは、背丈の揃えられた芝生のような柔らかい草の上に寝転がった。同時に、草と土の甘い匂いに包まれる。手足を伸ばし大の字になると、まるで自分まで草花の一員になったかように思えた。

 そのまま澄んだ青空を見上げていると、目の前に影がかかった。影はわたしの方へ手を伸ばし、額にかかる前髪を繊細にはらいのけた。


「服が汚れますよ」


 忠告するように言いながらも、優しく撫でるように触れてくる指が心地良くて、思わず笑みがこぼれた。


「メフィストも寝転がれば?、服なんてどうでもよくなるくらい気持ち良いよ」


 言いながらわたしが彼の裾を引っ張ると、メフィストは少しためらっていたようだったが、観念したのか渋々と隣に横になった。

 仰向けになり、メフィストはそのまましばらく晴れ渡る空を見上げていたが、心地良い静寂を破りぽつりと呟く。


「…眩しいです」


 拗ねた子供のような彼の口調に、くすくす笑ってしまう。


「何を笑っているんですか。華子こそ、日焼けするからと嫌がりそうなものを…」

「ちゃんと日焼け止め塗ってるからね」


 わたしが得意気に言ってみせると、流石ですねと笑われた。それに合わせて震える白い、喉。

 ふいに、もっと体温が欲しくなって隣の熱にすり寄る。喉元に顔を近付け、そっと首筋に唇をくっつけると、ぴくりと小さな反応。


「…こら、華子」


 唇を離し表情を伺うと、そこには少し困ったような呆れ顔が。


「まったく、こんな所で何を…。誘っているのですか?」


 遠慮なくいただいちゃいますよ、と唇を耳に寄せて囁かれる。とびきりの甘い声にくすぐられ、わたしは逃げるように身をよじらせた。


「ふふ、それは困るなあ」


 目の前で、はるか遠くの雲がゆっくり風に流されていく。ふたりで頬を寄せ合うようにぴたりとくっついて、それを目で追った。

 気づいたら、どちらからともなく指を絡ませていた。欠けていたピースがはまるような安心感。トクトク鳴る鼓動がいとおしい。

 顔を横にむけると、彼もこちらを向いていて目が合う。メフィストは口元を緩め、優しいキスをわたしに降らせた。





ふたりを包む太陽

(貴方のように、あたたかい)




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ほのぼの平和系メフィストさんです。どえすとか書きたい。

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