忠誠 委員長視点 (完結)
今までは性行為が終わるとすぐに部屋から追い出されていたため、俺は智寛の寝顔を見たことがなかった。
どれほど支配し、抱きつくしても、その高潔さを失わない、俺の最愛の男が今俺の腕の中で眠っている。
俺はあいつが、智寛を抱かないかとと提案してきた時、何を馬鹿なことを言っているかと、頭を疑った。
どこの世界に、自分の主を他の男に強姦させる側近がいるんだ。
だが俺が断るのなら、他の男を探すと言った。
俺はふざけるなと怒鳴った。俺は、こいつと違って自分の愛している男を他の男に抱かせたりなんかしない。他の男に抱かせるくらいだったら、俺が犯した方がどれほどマシか。
あいつは俺が智寛を抱いている間、部屋にじっと佇んで、智寛を見ていた。俺を受け入れる準備をするのも、後始末をするのも、全部あいつがやった。オレはずっとそれが我慢が出来なかった。
俺があいつとは違う。智寛を俺だけのものにしたかった。触れるのは俺だけで良い。
「あいつは行ったのか……」
いつの間にか起きていたのだろう。
何時もならいないはずの俺がいて、綺麗にされているはずの下半身も俺の精液で汚されたままだ。
いつもとは違う状況に、あいつが去ったのだと悟ったのだろう。
「知っていたのか?」
あいつがいなくなることを。
「だから、あいつが選んだお前に抱かれ続けた」
智寛が抵抗したのは、初めの一回だけだ。あの時は、あいつが両腕を抑え、俺が犯した。次からは何も抵抗しなかった。ただ本能的な男に犯されるという恐怖から、逃げ出そうとしたことはあったが。
智寛は分かっていたのだ。何故、あいつがそんなことをしたのかを。俺に抱かれ続けたのは、あいつがそう望んだからだ。
「あいつは俺を選んだ。あいつの代りにお前を守ってくれる男として……」
去って行ったあいつは智寛を愛していた。そして智寛もだ。お互いがお互いを愛していたのに、あいつは立場を気にして智寛に触れることもできず、代りに自分が選んだ男に智寛を抱かせることで、自分が抱いた気になっていたのだろう。
智寛もだ。あいつの宛がった男に抱かれながら、あいつに抱かれているつもりになっていた。
俺の扱いなんて、この2人にとってはただの肉棒に過ぎなかった。
だがもうあいつはいない。
これからは俺だけしか智寛のそばにいない。
認めてやるよ。お前は俺と同じくらい智寛を愛していただろうさ。だがもう、お前は智寛のそばにいられないんだ。
「俺が守ってやる……智寛。俺の全てをかけて。愛しているんだ」
あいつを思って泣く智寛を抱き締めながら、そう誓った。
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