忠誠 側近視点2
「何で、好きな男が他の男に抱かれているのを、平気で見ていられるのか理解できない」
委員長はそうおっしゃられます。私は私のような卑賤な身の者が智寛様を、抱くことなど考えたこともありません。そのようなことは許されるはずもないのです。
ですが、委員長はそれを理解できないのでしょう。
「ですが、それも今日が最後になります」
智寛様はとても優秀です。見崎家という日本の経済界に大きな力を持つ、分家の1つにお生まれになりました。
ですが、余りにも優秀すぎたのです。本家の跡取りとは比べ物にならないほどに。
本家の当主に実の息子たちよりも期待されるほどでした。そして彼らに本家の当主の座を取られるのではないかと危惧されるほどにでした。
智寛様は本家に取り入ろうとする分家・本家の人間たちにそのお命を狙われています。
勿論、智寛様のためになら、私ごときの命など惜しくはありません。身を呈してお守りする覚悟でおりました。
「側近を外されることになりました。これは私ごときが拒否できるものではありません。もう私は智寛様にお仕えすることはできないのです」
本家の連中は、私の存在が邪魔になったのでしょう。側近を外すようにと命じ、代りに他の者が、智寛様に害意を持つ者がやってきます。
「いつから、分かっていた?」
「三か月前からです」
だから私は委員長を選びました。私に代わって智寛様をお守りしていただく男として。
ただの男では駄目なのです。その家柄・権力・智寛様に相応しいご容姿。それだけではなく、智寛様を愛し、命をかけてまで守ってくれる方。
それが委員長なのです。
智寛様はお強い方です。あと10年あったら、本家の人間だろうが、負けることはなかったでしょう。しかし智寛様はまだ一介の高校生に過ぎません。分家本家の連中が束になってかかってきたら、今の智寛様では勝ち目はありません。
「私が智寛様と委員長様の性行為を平気で見ていたと、お尋ねになったでしょう?……平気ではありませんでした。しかし、私が智寛様にそれを強いるのです。胸が張り裂けそうなつらさも甘んじて受けなければならない罰なのです」
私ごときが触れてはいけない方。しかし、本当は誰にも触れさせたくはなかったのです。
「今日までは私がお守りしてきました……明日からは委員長様。貴方にお願いいたします」
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