小説(両性) | ナノ

▽ 6


恥ずかしい思いはさせないとライルは言ったが、息子同然の少年と閨を共にすることは十分恥ずかしい行為だ。

一生こんなことはしなくて済むと思っていたのに、まさかこの年齢で初体験とか、ありえないと思う。ライルが普通に令嬢を選んでくれていればこんな思いをせずに済むのに、と思いながら、ライルがやってくるのをベッドの上で待っていた。

ライルを皇帝にするため、皇帝にするため、と言い聞かせながら。

夜の儀を除いてすべての儀式を終えたライルが、軍服を着て入ってきた。軍事国家の皇太子としては相応しい服装だが、寝室には相応しくない。

ユインは皇后たちの指示で、女性ものの夜着を着せられているのに。30歳にもなってこんなものを、と泣きたくなった。


「湯を使ってきます。もう少し、お待ちください」

ライルはユインに敬語を使う。そして普段は使わない。皇太子と皇帝との話し方と、息子としてのライルとを使い分けている。

だから、今から抱くのは皇太子としてのライルなのだ。儀式のためだと、身を縮めて、ライルが湯を使っている音を聞いていた。

そして足音が近づいてきたので、顔を上げると、全裸でライルが立っていた。さすがに何か着てくると思っていたが、まさか何も身に着けずやってくるとは思ってもいなかったため、直視できずにまた俯いた。

ライルの裸なんて子どものころ何度も見ていた。おむつだって替えたことがあるのに。
だが今ではすっかりと変わってしまっている、少年と青年を行き来する年頃の男になった身体を見ることはできなかった。

「ユイン、そんなに怖がらないでくれよ」

ぎしりとベッドが弾む音がして、ライルが乗り上げてくる。

口調は優しげで、敬語を使ってきていない。

「あ、あの俺、ちゃんと言うよ」

「何を…?」

ライルの手がユインの夜着の紐を解いていく。見ていられなくてますます俯いた。

「ちゃんと、したってっ!俺が、立会人を兼ねているんだから、俺がしたって言えば、儀式は完了したってことになるだろっ……だから」

「だから、何もしないで欲しいって?可哀想だけど、無理なんだよ。確かに、立会人の省略はできたけど、確認することまで、省くことはできない。事後、俺がちゃんとユインをちゃんと抱けたか、確認される……安心して、ちゃんと女医を手配したから」

「女医って……」

「ユインがちゃんと破瓜したか。俺の精を受けたか、そういうのを確認する必要があるっていうことだ」

「そ、そんなっ……酷い」


性交渉が完了後に、確認されるということは、今まで誰にも見せたことのない下半身を見せろということなのだ。

「それに、ユインが嘘をついて、儀式は終わりましたといって、もし後でその嘘がばれたら?俺が皇帝になる権利を失っても良いの?……そういう隙をユイン自ら作り上げる状況を作れって?」

そこまで言われると、以下に自分が浅はかで、自分勝手なことを言っていたのかが分かった。自分ができることなど高が知れているのに、ライルの邪魔をすることになることを、望むなんて。

もちろん、ライルがこんな無体を言い出さなければ、しなければいい我慢だった。でもここまできて自分自身がライルの邪魔をするわけにはいかない。


「せ、せめて服脱がさなくたってできるだろ?息子も同然のお前にこんな身体見られたくない」

「こんな身体って、そんなに自分を卑下しなくても良いだろう?歴代の王や権力者を虜にした美貌と身体だ。誇ればいい」

「ほ、誇るなんて……見るなよっ」

「見ないでいられるわけないだろ?ずっと、この手に抱きたかったんだから」

とうとう、全裸にされてしまうと、ライルは全てを脳裏に焼き付けようとするかのように、じっと見つめてくる。居た堪れなさしかユインは感じない。

永久に誰の目にも触れないように、触れる事を許されないで生きてきたのだ。この少年のためだけに生かされてきた。


「俺を息子みたいに思っているって言ったって……ユインのここから生まれたわけじゃないだろ?」

「あ、当たり前だろ…」

自分の誰にも見られたことがない場所を、ライルは無遠慮に開いていく。恐怖に身体を震わせていると、宥める様に優しく口付けてきた。

「だったら息子なんかじゃないだろ?ここに入るのは、息子なんかじゃない。一人の男だ」

「分かってる……」

ユインの視界にいる少年は、もう息子などではなかった。息子ならユインに欲情したりはしない。

「痛いっ」

身体を引き裂いたりはしないだろう。

ライルがユインの破瓜の血を嬉しそうに見ていた。その血をすくって、ユインに見せた。

「俺とユインが繋がった証だ……痛いだろうが、初めは仕方がないから我慢して欲しい」

その血を舐めて、劣情をユインに見せ付けるライルは今まで知っていた少年には見えなかった。そうだ、ライルのいうようにもう知らない男にしか見えない。

この身に尊いはずの皇太子の精を受け止めても、一度では若い性欲を満たしきれず、何度も求められた。

初めての身体は痛み続け、一度で許して欲しいと懇願しても、止められないと若い次の皇帝はユインの身体を貪り続けた。

下腹部は狭い道を無理やりこじ開けたため、普通の少女の破瓜よりも多い鮮血が伝わり、ライルの吐き出した白濁で、汚されていた。


ユインはその後、ライルを受け入れ儀式を完了したか調べられたらしいが、その間の意識はなかった。


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