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「何考えているんだ!」
会議が終わると、ユインがライルに真偽を問いただすべく、彼の執務室に向かった。
「反対しないって言ったじゃないか?認めるって」
たしかに言ったが、まさかその相手が自分だなんて思わないだろう。
「俺はお前の曾祖父の息子だぞ?お前の祖父の異母弟でっ」
「それって大した血のつながりでもないだろ?何が問題なんだ?」
皇室では近親間の結婚も多い。親子や同母の兄弟の婚姻は許可されていないが、従妹同士などはよくある話だ。ライルの祖父の異母弟がユインだ。だから実際ユインとライルはそれほど近い血縁ではない。従兄弟よりももっと血の繋がりは薄いだろう。
しかしユインにとっては血の繋がりというよりも心の問題なのだ。
「俺はお前は実の息子のように育てたつもりだった。お前も、父親のように慕ってくれていたと思っていた」
何もできないユインだったが、唯一できるのがこの皇太子を愛し、可愛がって愛情を注ぐことだった。
ライルは次期皇帝として厳しい帝王学を受けていて、甘やかす存在などいなかった。ライルの母である皇后も、愛し期待していただろうが、それは皇帝となる息子という意味でしかなかった。
だからライルもユインにだけよく懐いて、本当の親子のように思ってくれていると思っていた。
「思ってるよ。俺にとってユインはたった1人の父親だろうし、それは変わりない。ただ、そこに肉欲が伴っているだけだ」
「に、に、肉欲って」
「ごめん。言葉が悪かったかかな?性欲を感じるって言った方が良い?」
「お、同じことだろ!」
「だからユインにも覚悟しておいて欲しい。俺は自分の信念変える気ないから」
いつから、こんなふうにライルは自分ことを思うようになったのだろうか。接し方が悪かったのだろうか。
周りが厳しく育てる中で自分ただ1人が、何でも許してライルの言うことを聞いてやっていた。無茶な願いなんかこれまでしたことなどなかった。何もできないユインができることなど高が知れている。
一緒に眠って、とか、おやつを作って食べさせて欲しいとか、ほんの些細なものでしかなかった。
「ユイン、貴方が気に病むことなど何もない。ただ、俺が我儘なだけだ。貴方への愛し方が、父親としてだけではなく、もう一つ加わったと言うだけの話……ユイン以外抱きたいと思わない。俺に抱かれる覚悟を決めておいてくれ」
呆然とするユインに、すでに王者の風格をまとっているライルは微笑んだ。
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