きつく目を閉じた外側の世界。そっと重なった晋助の唇が、あたしの上唇を軽く噛む。異常に唇が熱いのは、あたしのせい?晋助が口を開いて、あたしの口の割れ目を舐める、と力が抜けて、境界線を越えた感触が訪れる。嫌になる位熱くしつこい行為が、あたしの頭を沸かせているのは間違いない。どうしようもない位心地よい世界にずっと居られたら、いいのに。ぎゅ、と力が入りきらない腕で晋助に抱きつけば、それ以上の力で締め付けられる。じとり、と汗が滲む。それでも尚続くキス、息継ぎに離される唇がもどかしい。もっと、もっと。汗に湿った髪が肌に張り付いて気持ち悪い。何も考えられないくらい、めちゃくちゃにして欲しい。ぎり、と晋助のワイシャツに皺を作るあたしの指は浅ましく晋助を求めているようで恥ずかしい。力が入らないはずの体は熱に浮こうとしている、ああ嗚呼。

「なあ」

「っしん、す」

硬く瞑った目をそっと開くと、そこには当然のように有る晋助。乱れた髪は、汗のせいか肌に貼り付いている。その髪の切れ間から覗く鋭い視線に射抜かれてしまいそうだった。息継ぎの時間を貰っていたはずなのに、離れている唇がもどかしかった筈なのにあたしはゼエゼエと犬のように荒い呼吸を繰り返している。髪をくしゃりと掴まれて、頭を固定される。額がくっついた、ひんやりしている。・・いや、熱いんだ、あたしが。

「しんす、け」
「愛してる」

再び荒くつながる唇。聞いた話、男は女に性的欲求を興させるために女に唾液を送り込むのだという。この行為はその為か、それともあたしの口をただ単に封じたかったのか。
(卑怯だ)
自分だけいって置いて、あたしに返事をさせないなんて。
(怖がりだ)
きっと返事を聞くのが怖いんだ。彼は、きっと幸せになることに慣れていないんだ。
(それでもいい)(?)
あたしが晋助に幸せを教えてあげられるとは到底思えない。
(それで)(いいの?)

「   」

声が出せないのなら、この熱く続くキスでそれを伝えてやれば良い。どうせ、言葉なんて曖昧なもので表すことの出来る感情ではないのかもしれない。現にいま、あたしの気持ちを表すに丁度良い言葉が見つからない。ぐちゃぐちゃになった髪を晋助は更にかき混ぜてキスをする。唾液が口から零れて下へ降りていく。どうでもいい、と思った。なにも考えられない

彼の、部屋の隅


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