waro tane



2018☆11☆13(マサチューセッツΨΨΨマサユキ君

僕は稀代の二次創作作家にして芸術家である永冠(推定年齢120歳)氏の携帯サイトに感銘を受け、ホームページを創っていた一人の付き人である。今日は「助けてもらえないかしらん」とオットリmailで誘われた名誉に平伏して自作ピオーネ(ぶどう)を送り付けついでに記事をしたためようかと思う。

永冠氏は聞くところによると若い頃から創作活動をしていたようだ。その大半が西田敏行及びそれにまつわるなにがしかのジャンルやギャグだったので僕は納得した。彼の人の口癖に「マサユキ君(僕)。男は顔ですよ。顔のいい男はそれだけで国宝に値する」というものがあるのだが、「永冠氏のいう美醜の基準は、一般的な見目麗しい人のそれというのと違うのではないか」 と常々感じていたからだ。

「マサユキ君。みたまえよ」永冠氏は云った。僕が『御霊え』と聞き間違えて戦慄したことに彼の人は気づかなかった。「美しい生き物が歩いておるぞよ」足の悪い御婦人だった。「木製の杖はそのひとの身体に合わせてカタチを変えるのでな……麗しいな……」リハビリに励んでいる御婦人のほうはどうでもよいらしかった。生き物と云ったのは杖のことらしいと気づいて、僕は彼の人の不思議チャンぷりには拍車がかかるばかりだと、虫けらに等しいおのれの小ささに吐息を禁じ得ずこめかみを押さえた。

「どうかしたのかね」永冠氏は極小のつぶらな瞳につけたカラーコンタクト越しに僕を見た。「自らの前頭葉の小ささを嘆いているのかね。私は帽子が大好きだが、男物しか被れない……生物学上では女のはずだが、頭がよすぎるので女物が入らないのだ……」

真面目に微苦笑する彼の人は、最近は腐女子でも云わなくなった『生物学上では女』という意識高い系ワードを臆面もなく使用した。僕はまたまた戦慄した。

「池や沼に孵りたい」永冠氏は最後に云った。「ニホンサンショウウオは法で守られているがゆえ触れないらしい」 その横顔はサンショウウオのように平ぺったく、親近感を増幅させる小さな小鼻が上を向いてニコリと微笑んだ。

「吉野家の牛鍋でも食べていこう。君のおごりで」と彼の人はサッサと吉野家に消えた。次に永冠氏が還る場所は池や沼であればよいなと僕は思っている。食べ終えてから突き落とそう。


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