【娘慕情】
――商人の妻というのは酷なものです。
朝から晩まで店の手伝い
その合間の炊事に育児
店の取引相手に当たり散らされ
明日の暮らしがどうなるのやら
寝るのも怖い日が続き
汗水垂らしてぎらぎらした目で
背中を見せる夫に寂しさを抱え
あの夜まで、娘のおてつだけが私の支えでございました。
「お母はん。重湯やったら、口にできる?」
いずれは嫁にやらな可哀想
私の世話だけで花を散らして
好きなこともできんと。
好きな人もできんと。
「お母はん。寝てなあかんて。うちやったら」
――だんない。だんない。
この子は私の娘ではありません。
この娘は私の子ではありません。
この子の母は私ではありません。
天神さんは知ってはる。
私の罪を知ってなはる。
「お母はん。うち」
――お母はんの娘でよかった。
でも、もう少し。