【天神橋】


天神橋の渡りきらん少し手前にな。

茶色い毛色の犬っころがおりましたんや。

昔飼うてた犬にも似とって。



そういえば店の前でも、よう歩いとった気がすんのやけど、

あれから二十年は経ってるからなあ



見間違えか

子供か孫の代になっとんのか

似たような野良がおるもんやでと



ご機嫌伺いの帰りにな。

相手をしてましたん。

腹撫でてな。

そしたら、お前はん



『おおきに旦那さん! 松吉に宜しゅう云うといておくんなはれ!』



て。

犬がやで。

祭りの後の提灯以外

お月さんの灯り以外

あたり真っ暗けやで

……。



信じてない顔やな。

私、思うんや

あれ。

天神さんの化身とちゃうかってな



あるいは

夜中にこっそり、うちの鬼番頭が飯分けて

餌付けして。

うちの店が傾いても



いざとなったら。

……。
(犬鍋旨いらしいしな)

いざとなったら、

……。
(百年前の江戸に献上したら報償金)

いざとなったら……!

(名物看板犬『寒テンちゃん』として丸儲け)





――な。

商人て

怖いもんやなあ。






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