【寒天問屋】


エンディング08



「旦さん。何もかも有難さんでおました」

 善次郎が膝をついて、和助に頭を下げた。井川屋の奉公人たちはヤンヤヤンヤと囃し立てた。

「まさか松葉屋はん処のお咲ちゃんと番頭はんが、夫婦になるとは……」
「早う子供つくるんやで!」
「うっうっう。お咲はん……!」

 和助は張りついた笑みで応えた。「よ、良かったよかった。幸せになるんやで、善次郎!」

「でも、番頭さん。なんでこんなことに?」松吉が首を傾げた。

「気力が足りとれば、旦さんにもチャンスあったかもわかりまへんなあ」善次郎は云った。「松吉の才覚ポイントも足らんかったし、そもそもわてと旦さんの信頼度が低いままだした」

「五十年近く井川屋に仕えて、店はおろか嫁の世話も満足にして貰われへんなんて。善次郎はん可哀想だす。うちに来たら可愛い跡継ぎが出来ますで!」

 お咲が善次郎と腕を組んだので、和助は肩を落としてため息を吐いた。


※婿に行った善次郎は藤三郎にイビられたそうな……。

めでたしめでたし

カモメ





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