【寒天問屋】


松吉



「松吉のほうから聞こえたな」

 和助は首を傾げた。

「わ、わてだすか? わては、そんなこと」

 松吉がふと和助の背後を見ると、善次郎が血走った目でこちらを凝視していた。

「わてが云いました……」
「松吉! 井川屋はともかくて何や?」

 和助の叱責を聞いて、すかさず善次郎が割って入った。

「――旦さん。最近、耳遠なったんとちゃいますか。松吉は『井川屋も含め』てハッキリ云いましたで」
「ん……? そうかなあ。わては今、確かに」

 うーんと唸る和助を置いて、一同はそそくさと神社を後にした。


井川屋の売上がアップ↑
松吉の世渡り度が上がった↑
番頭の信頼度ダウン↓


 





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