【寒天問屋】


エンディング02



 歳を重ねた番頭に手を握られ、井川屋の主人は最期を迎えようとしていた。

「ぼてふり担いで」
「十五歳」
「嫁と会うて」
「店出して」
「善次郎。わてはええ買い物したなあ」

 善次郎ははりついた笑みで応えた。

「ええ買い物……いや、旦さん。残念ながら、わてのツンデレポイントが足りませなんだ。つらく当たりすぎたせいで、松吉は真帆さんと駆け落ち」
「――」
「銀二貫は寄進できましたけどな、できれば死ぬのは後十年ほど待ってもらえまへんか。そしたらわてに若い嫁が来て、井川屋の跡継ぎが出来る可能性も無くはない……」
「――あんな。今わては、後世に語り継がれるような、めっちゃええ死に様をやな」
「それはともかく、わてもそろそろ嫁欲しい」
「六十七やで。諦めなはれ!」
「暖簾分けもままならんのに継いだこの店も潰れかけや!」
「始末も神信心も番頭の可愛げもなかったからな。しゃあないわな」

 虫の息だった和助は善次郎に若い嫁を見繕うため、頑張って長生きしたそうな。


※その後、松吉の店は『新真帆家』として繁盛しました。


めでたしめでたし

カラス





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