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2018/08/02 

西田さんの絵は昔から描きたかった。数多ほどいる役者のなかで、ひときわ魅了されるのである。私はときどき彼のことに関して、意図して「美しい」「カッコいい」「顔が好き」という書き方をする。そのたびに難癖ともいうべき「美しいは違うでしょ」という否定が入るのだが、気の毒に。この人は目がよほど悪いのだなと思う。悪くてよかった? それは失敬。

冗談は顔だけにして「デブ、ハゲ、ブサイク、平面的、劣化、老化、短足、背が低い高い、しわくちゃ」という心ない言葉により、容姿を卑下させてしまう現代の風潮に激しい憤りを感じている。時には若い女性にまで下卑た笑いを向ける層がある。近年のそれは社会的な憎影ともいうべき映し出しであり、幼児性を捨てきれぬ人間の果てしない虐待である。どこかでコピペでもされた日には「独身女の僻みとこじらせ」と揶揄されるのだろうか。

「人間は顔じゃない」という標語もあまり好きではない。その言葉には容姿の押しつけを乗り越えるほどの力がない。私の目にどのように映るのか遺しておきたかった。もう五年十年粘って、フィルターの精度をあげようと思う。この件に関して議論の余地はない。「千年前の日本人は裕福で食べごたえがありそうだった」と標本にされるかもしれない人を描きたいと思う。

美しさとは感情の一瞬の爆発である。脚を出すな、みっともない、容姿に恵まれない、デザインが整っていない、センスが悪い、あの色はやめなさい、この髪型はよろしい、あれはよしなさいこれはよしなさい。自分の美意識に酔っていて虚しい思いこみを打破できないのだろう。芸術家は理想が邪魔をするので物事を明確に見られないことが多い。すべての人の目が開いていると思っているのである。その点において言葉の馬力はもっとも脆弱である。

私は鬼の話を好んで書くが、あれはほとんどが現実で見てきたことを見たまま書いている。よくも悪くも知らないことは書けない。上限一万の服も下が一万の服も、着る人や選ぶ人の心持ち次第で錦や襤褸に変わることがあった。女性はそれぞれのコンプレックスを逞しくバネにしていく。私がひときわ美しいと感じた女性は生まれつき筋肉の病気だった。何を着ていたかどんな容姿であったか覚えていない。必ずしもそうとは限らないが、欠けが人間の魅力を研いでいくのではないか。そういう人はどこにいても、それそのものが宝石のようである。

いつの時代も若い女性がときどき放つことではあるが、一人の若手女優がポツリと放った。「私たちはすべてを容姿で判断されてきた世代」。比較的もって生まれたものに恵まれている人がこれを言うので、言いえて妙な気もするが、その通りなのだろうと思う。今の三十代は個性を望まれた世代である。若者が若者であるだけでは生きられず、普通にしているだけで猛烈に叩かれた。前世代の反動があらゆる新世代を苦しめる。次の世代に引き継ぎたくない気持ちが空回りする。

整形大国の韓国から学ぶことは、今の若い人たちを助けるだろう。特に男性は女性より生きづらい時代である。容姿に関する漫画やドラマに関して、あの国ほど真髄をついているところはない。たまに皮肉な書き方をする癖がぬけず、正しく伝わっているか自信がないが、ハリウッドは化け物揃いになった時期がある。黒人映画が美意識を変えていった。「夜の子供たちは黒ではない。蒼だ」と言ったとき、『ムーンライト』の主題は私の世界を変えた。華やかな映画として頂点を極めるには至らなかったかと思ったが、大賞を読み間違えたのだというのは「あの映画らしい謙虚なつつましやかさだ」と思った。観ても見なくてもいい。主題はあの一言に集約されている。

時代は繰り返す。人に見せるために生きているのではないという。しかし人は誰かに見られている。

経典を分かりやすく翻訳したものはココロ教と呼ばれ、翻訳者の主観が入るので意味をなさぬことが多い。言葉の力を侮ってもいけないが、言葉はあくまで言葉である。どんな立派な言葉も表現も舌打ちと視線はすべてを打ち消す。意味のない喧嘩がこの世に溢れている。あたりの優しい言葉がことわりを説くとは限らない。年を取ると更に惑わされる。培ったものからの脊髄反射が邪魔をする。私たちはときどき終わりのない夢をみている。このままこの現象が続けば、誰のどんな言葉も素直に受け取れなくなってしまうだろう。呪いは誰かの強い言葉で解けるという。私は魔法の言葉を知らないので稚拙な絵を描いている。泣いている目では誰かの優しい視線の恩恵を受けられないからである。

表現は言葉よりも心を激しくつかむ。それが一輪の花でも、人でも、文章でも、絵でも、音楽でも構わない。何かに魅了される素晴らしさを噛み締めてほしい。発信するより受け取るほうが難しいのである。その一瞬以上のもので世界が変わることはない。

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