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聞き込みは姉弟が行った。ドイルは宿屋前に置いた荷物を、地面に放り出していたが、その正体に気づくとホームズが言った。
「これは――写真機かね?」
「撮りたいものがあったんです。スイスくんだりまで来たのはもちろん、理由あってのことで」
ホームズが「妖精か」と肩を落としたので、ドイルは探偵と荷物を見比べた。
「あなたは何者なのだ」ドイルは驚きを通り越して不信そうにいった。「私も馬鹿ではない。あなたのそれが、超能力や霊能力の仕業でないことくらいはわかる。しかしデニスのそれとは違い、ただの観察力では到底説明がつかない――」
「私が『そうだ』といったことは、すべて辻褄が合うようになっているのだ」ホームズはワトソンをちらりと見て、ドイルに視線を戻した。「それだけだ。ドイル君。続けてくれたまえ」
妖精の写真など、国内で撮ればいいものを。イギリスでは大量の神話が溢れ、それっぽい名所などたくさんあるのだ。ワトソンはそう思い、ハッとした。
「きみはここに来るまえ、どこで何をしていたのだ?」
「写真を撮っていました。ただし荷物が重いので、少年を雇い入れて……どうかしましたか」
「岩の暗号は?」これはホームズだった。「書き置きを残したといっていたが、そんなものは君の家にはなかったぞ」
「何の話をしているのか理解できません。私はたしかに書き置きをして家を出ました。というのは、朝早くに電報が届き、百年に一度の奇跡がライヘンバッハの滝で見れるというので、全力で国外へ出る必要があったのです」
「百年に一度の……」
ドイルは大真面目な顔で次の言葉を発した。
「滝壺に落ちた人間も、生き返るという伝説が」
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