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「危ないところだった。つい前置きもなく結論から口にしてしまった」
警部と共に消えたホームズは、戻って来るとすぐワトソンにいった。
「それはどういう意味ですか」
「いや、こちらのことです」ホームズは悩ましげに若干薄い髪の毛をかきあげた。「それにしても警部ったら、激しいのなんの……どの土地に居ても私と関わりたいのか、すぐ追っかけてくるので困るな」
「それもどういう意味ですか」
「あっ……」ホームズは身をくねらせた。「忘れてください。大丈夫。すべて順調ですよ。……んっ」
「シャーロック」赤ん坊は目をすがめた。「発情期は済んだでしょ。自分をいくつだと思ってるの」
ワトソンはちらりとホームズを見た。ドイルは五十を幾つか過ぎており、ホームズ自身は七歳年上の自分と変わらぬはずだ。デニスが呆れるのも無理はなかった。
ホームズは「五十六歳」と荒い息をついた。ワトソンは目をそらした。
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