05
「パパ。遊んで!」
子供らしい面もあるのだ。ワトソンはほっとして、ガラガラを再度手渡した。ドイルは一応、素直に受け取った。
「ほら、ワトソン博士がくれたぞ」
「もっと楽しい遊びがあるの。あのね、ママのヘソクリを見つけたの」
「なにっ」ドイルの顔はパッと明るくなった。「でかしたぞ、息子よ。妻が実家で療養している間に見つけたかったのだ」
ワトソンはうらやましかった。世の男たちの大半が、子供の潜在能力に期待しているだろう。実用向きな面で。
「それでどこにあった?」
「クローゼットの裏だよ」息子は胸を張った。「五ポンド札が八枚」
「そんなにため込んでいたのか……よし、案内しなさい」
息子をおろすと、たしかに赤ん坊はまだハイハイの段階だった。続いてドイルもせかせかと歩く。ワトソンは逃げるタイミングを失った。
「この部屋だよ、パパ」
「よし、よーしよしよしと」ドイルは息子を抱いたまま、クローゼットをのぞきこんだ。「ん? 壁面を壊したな。まあいい、いつものことだ。ヘソクリがあれば、修理してもお釣りがくる」
むふふとドイルはほくそえんだ。しかしそれは息子の次の言葉を聞くまでだった。
「お金はないよ」息子はキョトンとした。「暖炉で燃やしたの。灰がどんな色をしてるか、調べたくて」
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