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 結婚したてのドイル夫妻に子供ができたという知らせは、書簡で届いた。

「これはめでたい。ぜひ会いに行かないとな」

 ワトスンはいそいそと出産のお祝いを買いだした。自分たち夫婦には子供はない。

「ごめんください」

「おお、ドクター・ワトソン。よく来てくれました」

 大柄の紳士はにっこり笑った。本当に愛想のいい男だ。父性愛に満ちている。アーサー・コナン・ドイルはワトソンにとって、医学学校の後輩だった。

 ドイルはワトソンを中に通した。二人は互いの髭と襟巻きを褒め始め、機嫌よく二階へと上がった。ワトソンはすぐ帰るつもりで、上着も襟巻きも取らなかった。

「赤ん坊にこれを」ワトソンはガラガラを取り出した。「どんなものにすればいいか、どうにもわからなくて……」

「ありがとう」ドイルは眉を下げた。「しかし困ったことに、こういったものはうちの子には必要ないのです」

「そりゃまたどうして」

 ワトソンは髭の端を垂れ下がらせた。ドイルは慌てた。「違うんです。まあ入ってください。こちらが私の」

 扉をがちゃりと開けると、赤ん坊がこちらに背中を向け床に座っていた。

「息子よ。父さんの友だちが来たぞ。ご挨拶するのだ」

「えっ」

 赤ん坊相手にさすがにそれは無理ではないか。産まれたときから大人扱いする教育方針なのか、と見れば赤ん坊は暖炉の前でくるっと振り返った。手には紙を持っている。

「はじめまして。あなたはアフガニスタンからいらっしゃいましたネ」

 ワトソンは卒倒した。

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