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 しんみりした空気を断ち切るように、ワトソンは口を開いた。

「私とレストレード警部の誤解が解けたのは、お兄さんのおかげだよ」

「シャーロックじゃないぞ。頼りがいのあるほうだぞ」マイクロフトは胸を張った。

 次女のジョーは真っ赤になって倒れた。エイミーはその反応でだいたい予想がついた。知りたくなかったのでいった。「もういいわ。黙って」

「壇上にあがって尻の穴を見せたのだ。どちらがどちらの鍵穴に鍵以上の大きさのモノを突っ込むことが不可能なのは、誰の目にも明らかだった」

「黙りなさい発情不良の駄犬。それ以上いったらバスカビル家に送るわよ。例の化け物犬には子供がいるから、さぞや可愛がってくれるでしょう。今後は穴を大事になさい」

「もっと言って!」ワトソンは決め台詞を思い出した。「間違いないエイミー。やはり君が私の女神だっ」

「それは気のせいよ先生。かわいそうな息子を見なさい」

 ワトソンは一足さきに泣き濡れているとばかり思っていた火掻き棒を見た。

 なんと! 火掻き棒は無反応だった。

「うう……うぅぅ。あれはまさしく例えるなら牡蠣! 牡蠣が豊富な年になりそうね……小銭が多くなるわ」

 ジョーはうわ言を呟いてのレストレード警部の上に倒れこんだ。警部のストーンヘンジの柱は相手を見つけて悦んだ。介抱するうちに次女の乱れた頭を押し上げるほどだった。

「間違いありませんな。牡蠣はお嫌いですか、お嬢さん」

 レストレードは紳士だった。自分のせいでか弱い女性の気分をさらに悪くしてはいけないと、彼女を姉のほうに押しやった。

 しかし姉はいつの間にか膝の上にのせているハドソン夫人の歯並びを褒めるのに忙しく、それは入れ歯なので当然だったがハドソン夫人は身をくねらせて恥じらった。

「いえ」次女はレストレードをまじまじと見た。「いえ……もう大丈夫です。半クラウンは兄貴たちに預けますので。でも儲けたソブリン金貨が……」

 言葉のほうは大丈夫ではなかった。しかも金儲けの算段までしていた。

 レストレードは大人の魅力を最大限に発揮した。

「金貨は私が守りましょう。マイクロフトさんのおかげで警部の職にももどれそうです。出世は絶望的ですがね」

 ジョーは落ちつかなくなり、視線を落とした。そこではレストレードの小銭を入れる場所が存在を主張していた。ここに乗ったのだ。顔は赤いままだったが、意味は違っていた。

「それもいいですね。兄貴たちのポケットよりたくさん入りそうだし」

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