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ワトソンは獄中ではなく、目隠しをされて馬車に乗せられていた。
「どこに連れていく気だ……私が誰だか知っているのか!」
馬車に乗せられる前は、マイクロフトへの暴行罪で裁判所に送るのだといわれたはずだった。
自分の状況がよくわからない。一昨日はハーレム、昨日は留置場、今日は馬車。
「はっ。まさか私の可愛い火掻き棒ちゃんをポークソテーに変える気ではあるまいな。おい! なんとかいいたまえ!」
「ポークソテー?」
声に聞き覚えがあった。ワトソンはいった。「小男のイタチ!」
「レストレードだ。だがよくわかりましたな、ドクター……耳が悪いというのに」
ワトソンが事件の日付を間違えるのは、耳が悪いからだという噂がある。レストレードは気の毒に思った。
その話がまことなら、ワトソンは肩も足も耳も砲弾でやられたことになるのだ。
それだけ広範囲に衝撃を浴びたのなら、頻繁に見かける火掻き棒が小さいわけも理解できる。ポークソテーにする気もおきない。
「目隠しプレイなんて高度な技を」ワトソンはやはり聞いていなかった。「何が目的なんだ?」
「すぐわかる」
「まさか……お尻の噴火口は今は駄目だぞ。留置場のあまりの寒さで破裂したばかりだからな」
「痔主の世話になるほど落ちぶれてはいないぞ!」
ワトソンは手探りで隣にいるらしきレストレードの手を握った。「よかった。君の噴火口には前から興味があったのだ」
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