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「さあベス。椅子に寝転んで」

 長椅子とはそのためにあった。いつでも励める。床でもエンジョイできる。

 ベスは不思議そうにしながらも従った。「お兄ちゃん。目が怖いわ」

「鋭利な刃物と呼んでくれ」

「とっても細いわ」

「下はそうでもないよ」ホームズは脇を向いてくっと笑った。「ワトソン博士の火掻き棒とは比べ物にならない」

「ズッキーニだったわよ」ベスはぽっと顔を赤らめた。「ワトソン博士って、とっても素敵な方ね」

 これは聞き捨てならない。

「ど、どこがかね」

「だって。その」

 もじもじとスカートの下にある細い脚を擦り合わせる。探偵の透視力はすさまじかった。

「濡れているのか!」

 あらたな特殊能力は四女ができてから会得した。

「胸が熱いの。この三ヶ月、ワトソン博士と彼のズッキーニのことが頭から離れないの」妹は手を口元にやり、恥じらって顔をそむけた。

「暖炉の火種は消したはずだ……なんたることだ……」ホームズは脱がしかけていた妹のオベベを着せた。

「お兄ちゃん。どうしよう。ワトソン博士はまだ既婚者よ」

「うむ……」ホームズはがっかりしたが、冷静さを取り戻した。「問題はそれだけではない。おまえも気づいているだろうが、ワトソン博士は赤毛同盟に入るつもりなのだ」

 いや、それほど冷静ではなかった。

「赤毛連盟よ、お兄ちゃん」

 こちらはさらに、どうでもよかった。

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