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 妹たちはそれぞれマーガレット、ジョセフィーン、エリザベス、エイミーと名乗った。

 ワトソンは首を捻った。

「それってひょっとしてオルコット女史の……」

「母親がファンでね。長女が生まれたときに即決したのだ。マーガレットはメグ、ジョセフィーンはジョー、エリザベスはベスと呼んでいるよ」

「アメリカン素晴らしい。私はワトソン医学博士。傷病年金あり。妻は他界したことになってるけど、実はイギリスの法律上離婚もできなくて別居中。お兄さんとは腹心の友。お互い困ったときは財布の紐でかたく結ばれている。よろしくエイミー!」

「触んないでよ。この薄汚いブタ」

 ワトソンの股間は時計台より高くつき上がった。「もっと言って」

「これはジョン・H・ワトソン博士といってだね、まあ名前も凡人だが中身もこれまた凡人という、特殊な意味でかなり非凡なひとなんだ」

「お兄さまの、彼氏。なのですか」

 清楚な黒髪は大歓迎、とワトソンは思った。

「そう。いやいや馬鹿をいってはいけないよ、メグ」ホームズは通常では考えられないほど忍耐強く妹を扱った。「おませさんだね」

「男色関係にあるならヤードに通報する」次女のジョーはくるりと振り返り、扉から出ていこうとした。

 しかし出しっぱなしのワトソンのお花畑を見て顔を真っ赤にし、いやっ、不潔っ! と両手で顔を隠した。気が合いそうだ。

「ホームズ。金髪もいいものだね。うん、私のオールド・ビッグベンがそう言ってる」

「股間の黒薔薇をむしりとって食わせてやるから、少し黙ってくれないかね。ワトソン」

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