05
妹のひとりは黒髪だった。「お兄さま」
妹のひとりは金髪だった。「兄貴」
妹のひとりは茶髪だった。「お兄ちゃん」
妹のひとりは赤毛だった!「兄さん」
ひしっと四人に抱きつかれ、ホームズは一瞬でれでれと顔を歪めた。
ワトソンはそれを見逃さなかった。「ホームズ君」
親愛のキスが飛び交うなかで、すべての声はまったくどこにも届かなかった。
揃いもそろって可愛い。若い。全員十代というところだろう。
ワトソンは居住まいをただして再度いった。
「ホームズ君!」
「ああ、なに? ……そうだった。すまない。忘れるところだった。こちらが私の」
妹たちはいっせいに整列した。
「可愛い妹たちだよ。それからこちらはワトソン博士とその火掻き棒」
まあ、と目を光らせて、長女が火掻き棒を見た。
へえ、と耳をほじりながら、次女が顔をそらした。
やだ、と口をおさえ、三女が顔を赤らめた。
四女は鼻で笑っただけだった。
「タイプ! もろタイプ! 赤毛タイプ! わかったなホームズ」
「わかったから首をしめるな。赤毛連盟でもつくってやるから」
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