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 妹のひとりは黒髪だった。「お兄さま」

 妹のひとりは金髪だった。「兄貴」

 妹のひとりは茶髪だった。「お兄ちゃん」

 妹のひとりは赤毛だった!「兄さん」

 ひしっと四人に抱きつかれ、ホームズは一瞬でれでれと顔を歪めた。

 ワトソンはそれを見逃さなかった。「ホームズ君」

 親愛のキスが飛び交うなかで、すべての声はまったくどこにも届かなかった。

 揃いもそろって可愛い。若い。全員十代というところだろう。

 ワトソンは居住まいをただして再度いった。

「ホームズ君!」

「ああ、なに? ……そうだった。すまない。忘れるところだった。こちらが私の」

 妹たちはいっせいに整列した。

「可愛い妹たちだよ。それからこちらはワトソン博士とその火掻き棒」

 まあ、と目を光らせて、長女が火掻き棒を見た。

 へえ、と耳をほじりながら、次女が顔をそらした。

 やだ、と口をおさえ、三女が顔を赤らめた。

 四女は鼻で笑っただけだった。

「タイプ! もろタイプ! 赤毛タイプ! わかったなホームズ」

「わかったから首をしめるな。赤毛連盟でもつくってやるから」

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