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魔方陣を描くには広い敷地が必要だった。
ドイル家の部屋は子供用品と書斎と主人の趣味であるコスチューム部屋で埋まっており描けるスペースはない。
ワトソン家に行くわけにはいかなかった。ジョンのメアリーに対する複雑な想いが足を向けさせないのだ。
ドイル邸裏手の余った土地を使うことになり、一同はドイルの妻を先頭にゾロゾロと足並みを揃えた。
「ここならいいだろう」
「このチョークで」ジーンは妊婦にも関わらず腕まくりをして、やる気を見せた。「描きましょう。調子が出るの」
「おまえ……これは……」ドイルは不本意な出来事を思いだし、顔を曇らせた。
「こう言ってはなんだが、成功する気がしない」ワトソンが不安げに言った。
「奇遇だな。私もだ」
ジョンがため息を吐いて持ってきた本を握りしめた。ワトソンに抱っこされたデニスが、ジョンの頬をつねった。
ジョンは珍しく目尻をゆるめた。
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