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 学校に戻った長女のメアリーは、図書室の窓際に座っていたため――不審な人影に気づいていた。寄宿舎の門構えに背の高い男が一人。

 本人は夕闇にまぎれて隠れているつもりのようだが、地面に落ちた影が丸見えだった。

「変質者かしら?」

「怖いわ。最近はぶっそうな世の中になったものね」

「目が鋭いしとっても背が高い」

 メアリーは無視を決め込んだ。父親の助けになるような文献を探すのに忙しかったからである。

 心当たりが無くもない。

「あっ。校内に入ったわよ」

「門衛は何をしているの。どう見ても父兄とは思えないわ」


 ――あの旅行着。


 メアリーは顔を上げた。やはり、という思いで再度階下に目をやる。

 ホームズだった。

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