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ホームズは長椅子で横になり、くつろぎきっていた。
ワトソンはそれを見ただけでジョンの言うことは正しいのだろうとアタリをつけた。
「ドイル君は?」
「書き物を」
「ワトソン君は? 君じゃないほうの」
「……書き物を」
「そうか。弱ったな。いやなに、君のことではないから悪い風には取らないでほしい。ワトソン君は普段は便利――気の利くよい男なのだ。書き物をしてないときは大体ね」
ワトソンは警戒心を強めた。だが逆に、顔は裏腹に親しみやすいポーカーフェイスを装ったままだった。
「私では君の話相手に役不足かな」
「とんでもない! 滝で会ったときの君の弁舌には敬服したよ。ドイル君とは長い付き合いみたいだね」
ワトソンはポットに入っている珈琲をついだ。「学生時代からの友人だよ」
「そのあたり、僕の能力なら三秒で推理できるはずだったのだ。だが残念なことに今は違う」ホームズは体を起こした。「ものは相談なのだが、あの本は今誰が持っているのかな?」
ワトソンの背中をなぜか嫌な汗が流れ落ちた。ホームズの圧迫面接はしばらく続いた。
一分もする頃には視線に耐えきれなくなり、ワトソンは口を開いた。
「私の医療鞄に……」
「嘘だな」
ワトソンはがっくりと頭を下げた。摩訶不思議な本の力などなくとも、実直なワトソンの嘘など見破れないわけがなかったのだ。
ホームズはまた来るよと言い残して珈琲をポットから直接がぶ飲みした。ワトソンは恐怖にうち震えた。
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