04
ベルの音を聞きつけたのは、ワトソンのほうが早かった。
食事の時間を心待ちにしている犬と変わらない速度で扉にはりつく。飛び散ったよだれをホームズがスカーフでゴシゴシとぬぐった。歯がきしんでいる。早口で叫んだ。
「開けるな。まて。おすわり」
「わわわ私をなんだと……」ワトソンはかみついた。
「ハウス!」
「小屋には君が入れ!」
「ここにハドソン夫人の特製苺ジャムクッキーが」探偵のポケットは異次元より深い。「ちょっとカビてるが君なら食べられないこともないはずだ」
ワトソンはおとなしくなった。もっとないのかとまたがってくる。「うわっ、……んっ、んっ!」
「いい匂いがすると思ったのだ。どこかにまだ隠してるだろう」
「君の財布と同じでからっけつだ。わかったら離せ」指までなめとろうとするので足蹴にした。
そして絶妙のタイミングで妹が入ってきた。
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