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うーん、うーんとうめき声を発しながら、長椅子に寝かされたままドイルの意識は朦朧としていた。
ワトソンは――どちらのワトソンもである――脈をはかったり担いで運んだり、そっくり瓜二つなお互いに視線をやらないようにしながら、協力しあった。
キングズリーがお湯を沸かした。メアリーは毛布を持ってきた。ホームズは暴れるデニスの襟首を指先でつまんだ。
「ホームズ。彼の首はまだ完全に座ってないんだぞ!」
ワトソンがいった。ジーンは慌ててホームズの手から自分の息子を取り上げ、泣き叫ぶ赤ん坊をあやしながら隣の部屋に消えた。
「ああ全くわからない……どっちが僕の相棒なんだか、足跡を探っても構わないかな?」
二人はホームズを完全に無視した。そのやり方に傷ついたホームズは肩を落として退室した。
「ワトソン博士……ワトソン君」
「ここにいますよ」
ドイルが伸ばした手を掴むと、ワトソンはため息を吐いた。影法師をチラリと見る。
「頭ばかりか目もやられたらしい。君が二人に見える」
「私は目ばかりか耳もおかしいんてす。幻聴が聞こえる」
もうひとりのワトソンもため息を吐いた。「二人とも正常です。医者としての見解を言わせてもらうなら」
ワトソンとドイルはお互いの手を握りしめて、意思を確認した。そして存分に叫んだ。
医者のほうはその反応に堪えた。大声をあげるのは、精神を崩壊させないための一番有効な技だからである。
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