02



「妹に会わせろだと? 冗談じゃない。待て。理由は言わなくていい」

「ホームズ! くすぶってうずく火の粉の音が聴こえないのか? 燃え盛る暖炉の中を、そう、私のこの……この……」

 その先はなかった。荒い息づかいに反し、胸を押さえる仕草がいじらしく見えぬこともない。

 ホームズは馬鹿の相手はとことん疲れるといった風情で続きをいった。

「ぐちゃぐちゃに掻き回したいんだろう。その細くて黒くてあるかないかもわからないようなもので。私のパイプ程度の長さもないくせによく言ったな。この性犯罪者。社会の汚染廃棄物。豚の睾丸!」

「もっと言って……」

「呪われたコカイン中どく――!」ホームズは咳払いした。「不毛な争いはよそう。妹たちには今朝電報を打った。紹介の前にいくつか注意事項がある」

「たち? ひとりじゃないのか」

 選べないかも、二人とつき合えるかも、前と後ろで肉布団ごっこができるかも――という不安がワトソンの頭をよぎった。



[ 2/111 ]

[*prev] [next#]
[しおりを挟む]


×
- ナノ -