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「でも、俺、一紗が笑ってくれると、それだけで、幸せで満ちるから」
「…悠斗くん」
「不思議でしょう。離れていたら、抱きたいとか、押し倒したいとか、変な妄想するくせに、こうして、一緒にいると幸せすぎて、泣けてきそう」
格好悪いですよね、と言いながら、悠斗くんは伴奏子を取り出して、俺の指に巻いた。
「不安にさせてごめんなさい。俺、今までが今までだったら、これからも、不安にさせるようなこと、たくさん出てくるかもですが」
「……うん」
「これからの、俺を見てください。一紗」
そっと俺の指に唇を落として、まるで、王子様のように、悠斗くんは微笑んだ。
俺は何を不安がっていたんだろうと、瞳を閉じて思った。
「ごめんね。ありがとう、悠斗くん」
「いえ、そんな。むしろ不安なことあったりしたら、全部俺に言って下さい」
「うん」
「それに、してほしいこと、あったら、言って下さい」
触れ合いたいだなんて思った瞬間、何かをキャッチしたように、悠斗くんは男らしく、そう言った。俺は、恥ずかしくて、俯く。
「そ、そうだな、うん」
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