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そう、恥じらい。
俺はまだキスをするのも恥ずかしくてたまらないのに、悠斗くんは、そうでもなさそうだ。
これが慣れているっていうことなのか?
いや、別に、そんなことどうだっていいじゃないか。
「あ」
お客様に頼まれていた花束を作っていたら、指を切ってしまった。
ジンジンと痛む、それに、俺は、少しホッとしている。
変だよな。
「一紗、大丈夫!」
「え、平気、平気」
「……指もそうだけど、さっきから、元気ないですよ?」
「そ、そうか、いつも通りだと、おも」
思うと言いきる前に、真剣な悠斗くんの目を見て、俺は黙ってしまった。
まっすぐ俺のこと見てくれている悠斗くんに嘘を吐くのは、よくないなって。
何度も口を結んで俺は言葉を紡ぐ。
「……不安、なんだ」
「不安なんですか?」
「うん」
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