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「一紗、この人、怖い」
わざとらしく、俺の服を引っ張ると、悠斗くんは甘えた声を出す。
俺はどうしたらいいのかわからなくて、おどおどしていた。
すると店長が不機嫌そうに「仲良くなったんだな」と笑った。
「店長、どうしたんですか? 無理に笑わないで下さい」
俺は慌てて、そう言った。なのに店長は「そんなことない」と言って、悠斗くんに微笑む。その顔、本当に、怖い。
「悠斗くん。一紗のこと泣かせるなよ?」
分かっているだろうな、と店長は強く言う。
悔しそうな顔をして。
「はい。俺、ちゃんと一紗のこと、大切にしています」
まるで両親に結婚の挨拶をしに来た彼氏のような雰囲気で、悠斗くんは言ってくれた。俺はそれが嬉しくて、恥ずかしくて……
「プレイ以外じゃ、絶対に泣かせません!」
「………」
「……悠斗、お前な…」
「なんですか?」
俺、変なこと言いました?そんな顔をして悠斗くんは頭を抱えた店長と、俺を、見比べた。すると店長は「馬鹿らしい」と一言残して、去って行った。
俺、やっぱり、悠斗くんには、恥じらいがないと思う。
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