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「わかってない!」
俺は涙が溢れるのをこらえる。
「俺、ずっと、佐々木くんに、知らない世界に連れ出してほしいと思っていた」
「……斉藤さん、それって?」
どういう意味、と彼は尋ねる。
「佐々木くんは、俺のことを幸せにしてくれそうだと思った」
「何それ?」
「おかしいだろ。本当。でも、俺は、そうなればいいと、思う気持ちが強くなってきて、困っていた」
「…………」
「俺、女じゃないけど、女みたいに、佐々木くんを見ていたんだ」
「それって…」
「付き合いたいって思ってる、だから、俺は、悩んでいた」
「斉藤さん」
「ちょ、ま…っ」
「何を待つんですか?」
あと数ミリで、キスしそうなくらい、近くで、佐々木くんは意地悪く笑った。
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