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「斉藤さんのことが、好きなんです」
「佐々木くん?」
「一紗って呼びたい。もっと一緒にいたい。キスもしたい。抱きたい、抱きしめたい。気持ち悪いって思われたくない。嫌われたくない」
「…………」
「冗談じゃない。これ、みんな俺の本音」
これが最後だと覚悟を決めたように佐々木くんは俺の右手を掴んだ。
「ずっと出会った時から、俺は、斉藤さんのことそういう目で見ていました」
「俺は…その」
「いいんです。斉藤さんの気持ちを裏切ったのは俺だから。だから、思いっきり、殴ってくれても、いいんです。本当のこと言ってくれて、大丈夫ですから」
俺の右手を握っている佐々木くんの手が震えながら、去ろうとする。
俺は、意を決して、その手をとった。
「斉藤さん?」
「……あのさ、佐々木くんは大切なことを忘れている」
「え?」
「俺の気持ちを聞いてもないのに、決めつけないでくれ」
「決めつけるも何も、始めっから、俺はわかって」
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