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「俺、斉藤さんに、そんな風に優しくしてもらう資格ないんですよ?」
そっと、佐々木くんは抱きついた俺の手を払う。
「本当に、汚い生き方をしてきたんです。自分でもそれは分かっているんです。でも、その方が楽だから、都合がいいからって、気にもとめませんでした」
淡々と語る。
言葉が溢れかえるように、語る。
「自分がよかったら、それでいいんです。俺。相手がどう思おうと、俺さえ楽しければ、よかったんです」
「…………」
俺はどう答えたらいいのかわからない。
だから、今は静かに聞いていた。
「傷つけることが平気で、何人も泣かせて、斉藤さんにだって、俺、自分勝手になって」
「……いいよ」
「え」
「自分勝手になってくれていいよ。俺も、自分勝手に、佐々木くんと関わっている」
「……そう、ですか」
「ああ」
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