「わからなくて、正解です」

一瞬、傷ついて、もう駄目だって顔をしたのに、佐々木くんはすぐに笑顔になる。にっこりと満面の笑みを浮かべる。

「ま、たいしたことではないのです」

俺に背中を向けて、歩き出す。

「何処に行くの?」

俺は壊れてしまいそうな声で聞いた。

「わからない」

佐々木くんは、泣き出しそうな声で言った。

「俺、どこに向かえばいいんでしょうか。俺、好きな人にも、振り向いてもらえない俺は、どこに向かえばいいんでしょう」

「……佐々木くんっ」

俺はとっさに彼の後ろから抱きついた。
見ていられなかった。ほっといたら、消えてしまいそうだった。
いなくなってほしくなかった。
俺の傍に居て欲しかった。
どうしたらいいのか、俺にもわからなかった。

「斉藤さん…?」

「ごめん、俺、格好悪く、行かないで、しか、言えない。何もできないけど、佐々木くんの話なら、聞ける。俺にできることなら、何だってするから」




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